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執事はお嫌いですか?
第1章 プロローグ
斎へ。

母さんと父さんは、少し出かけてきます。
朝ごはんは冷蔵庫に作ってあるので食べてください。


たった2行、それだけが書いてあった。

急ぎの用事だったのか・・・?
まあ、仕事があるしな・・・。

俺はひとまずホッとして、作り置きの朝ごはんを食べてのんびり過ごすと、好きな本を求めて近くの本屋へ出かけた。

そして、ひと際本屋で過ごし、何冊か買って帰ると、この榊クロという男がなぜか俺の部屋に居たのだ。

しかも、屋敷の鍵を持って。

屋敷の鍵はもちろん、両親と俺、後はもしものためにと親戚と父さんが信頼している人に持たしているだけの分しかないはずだ。
さらに、ここの鍵は珍しい形をしていて、型を渡して注文しないと手に入らない。

泥棒・・・ではないよな・・・。
普通に鍵持ってるし・・・。

「どうされましたか斎様?」

だったら、母さんか父さんが許した人か――?

名前を知られているのにも気づかず、俺は夢中で思考を巡らす・・・。

チラッと確認してみると、キョトンとした顔を向けるクロという名の男。

黒くて綺麗な瞳がじっと見つめてくる・・・。
視線が鋭い―――・・・。

俺は自然と後ろへ一歩引き、距離を置いていた。

「・・・まず、何で執事なんだ。おかしいだろ」

俺は眉間にシワをよせ、クロを睨みつける。

もし俺の世話をするなら、普通メイドとかじゃないのか?
いや、そもそも俺は世話を焼いてくれる人は要らないのだが・・・

「それはこちらのお手紙をお読みください」
「何だこれ」

俺に渡されたのは一通の手紙。
表には、「斎へ」と母さんの字で書かれている。

また手紙・・・・。

なぜか、ひやりと額に変な汗が出た。

「えーっと・・・

斎へ。

いきなりですが、母さんたちは仕事で海外に行くことになりました。
ですが、母さんは斎のことが心配でなりません。

そこで、アルバイト紹介所で執事のクロくんを雇いました。
メイドさんも考えたのですが、健全な男子高校生が女性の方と一つ屋根の下にいるのはどうかと思い、執事さんにしました。

では、クロくんと仲良く過ごして下さい。 
母より――・・・」

俺は読み終わりと同時に息を吐くと、そっと手紙を折りたたみ、無言でクロに手紙を渡す。
渡すとき、自分の手が強張っているのがわかった。

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