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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
時計を見ると、まだ午前中。
春が来るのは多分夕方だろうな・・・・とあの性格から予想して、俺はラグマットに転がり込んで偶然見つけたアルバムを開いた。
「何年ぶりだろう・・・」
ちょっとした不安と高揚感。
表紙めくると、自分が生まれてすぐの写真が貼られていた。
海外に居る、両親との生まれて初めての写真。
手を焼くほどポジティブで明るくて、天然だけど陶器の様に肌が白くて、目が綺麗で、笑うとすごく優しい印象を与えてくれる母さん。
少し童顔な、だけど決してなめられる様な顔つきじゃない、人一倍仕事に真剣な父さん。
「元気かな・・・」
親離れができない子供ではないけれど、やはり少しは寂しくはなってしまうもので、不意に思い出してしまう。
家族だし――・・・
「今度メールしてみよっかな・・・」
学校のこと。
クロとの生活のこと。
今の自分のこと。
先日メールをすることを、“今度”と言って諦めてしまったけど・・・
話したい・・・・
仕事中でも少しでも目を通してくれたらそれでいいかな・・・と自分で気分を励ますと、何枚かページをめくった。
初めは小学生の入学式。
校門前に仏頂面で、いかにも嫌そうな顔をしている自分に思わずふっ。と声が出た。
母さんとかに無理やり、笑って。なんて言われたんだろうなぁ・・・
小学生の頃から、あまり人前では笑う柄では無かったし、この時も人付き合いだって苦手だったんだな。と思う。
友達欲しかったくせに・・・。
「身長もまったく変わんないのがな・・・」
はぁ・・・と息をついて写真をなぞると、俺を起こす間にクロが開けてくれていたのか、大きな天窓から、あたたかい風が入ってきて欠伸をした。
どこかでわくわくして寝足りなかったか・・・?
んーっと腕を伸ばしてごろごろと転がると、クロがお茶を持って部屋に入ってきた。
「進みましたか?」
机に置いて、俺のほうへ近づいてくる。