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執事はお嫌いですか?
第2章 主人の執事は先輩です
「俺はれっきとした男子高校生だ・・・!」
「それは失礼しました。
どうやら見間違ったようです」
ブチッ―――とどこかの血管が切れた音が聞こえた気がした。
・・・コイツ明らかに俺を馬鹿にしているだろ・・・!
キッとクロを睨むが、その睨みも虚しく、クロはお構い無しに俺の学校の制服を持って屋敷の廊下を進んでいく。
本当にこの男は執事のくせに、会った当初から鼻につくことしか言わないな!
人が気にしていることを・・・!
「クロ、降ろしてくれないか」
「それは無理です」
「降ろして」
「嫌です」
それに言うことも利いてくれない。
何なんだこの執事は。
俺が予想していた一般的な執事とは全くもってかけ離れている。
言動が明らかにおかしいだろう。
普通は主人の指示は利くんじゃないのか?
「・・・クロ、お前は執事向いてるのか?」
こんなんじゃ執事なんて仕事は楽しくないだろう。
そんな軽い気持ちでクロに訊いてみる。
「え?」
クロは突然足を止め、驚いた様子で僅かに目を見開いた。
かと思うと、ふっ。といきなり笑い出した。
「な、何だよ」
「いえ。
ただ、斎様が私のことを思ってくださったことが嬉しくて――ありがとうございます。
でも自分に執事は合っていると思いますよ」
そう言うと珍しく花が咲くように優しく笑った。
いたずら心も無い、無垢で純粋な笑顔だ。
俺はあまりの温度差に、うっ、と喉を詰まらせた。
「そ、そうか」
そんな返答しか出来ないほど、いつの間にか質問した当事者が困ったオチになっている。
このクロがここまでの笑顔を見せるほどの理由は何なんだろう。
兄妹かなんかが居て慣れている――?
いや、こんな兄が居たら末っ子はたまったものではないだろう。
ただの世話好き――?
にしても子犬とかと男子高校生では世話のレベルにしても訳が違う。
「謎だ・・・」
「?」
そして、そんな笑顔を見て俺は素直にかっこいいと思ってしまった。
こんな顔も出来るのだと――予想外だったのだ。
女性ならすぐに落ちてしまうレベルなんだろう。
「では急ぎましょうか」
「ああ・・・・・」
少しばかりむず痒い中、俺はクロに連れられていった。