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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
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市バスに揺られて、約10分。

「クロ、ここか!」
「はい、ここです」
「斎、はしゃいでる?」

上を見上げて、俺は「おぉ~」と感嘆を漏らす。

「斎様、そんなにはしゃぐことですか?」
「べ、別にはしゃいではいないが、少しは楽しみではあった!」
「斎それ、少しじゃなくて――」
「春うるさい・・・!」

はしゃいではいない・・・
ただちょっと、思っていた以上に建物が大きくて、テンションが上がっているだけだ・・・!

クロはその横で、そんなことをやっている俺たちをよそに、「行きますよ」の一声をかけて、俺の手を握った。

「連休なので、人ごみに紛れない様にしてください。
ただでさえ小柄なので、迷子センターにでも行かれたら困ります」
「う、うん・・・」

クロから皮肉を言われたのに、ギュっと優しく手を結ばれ、言葉も手も振りほどけなかった。

「斎、俺、お邪魔・・・?」
「いや、傍に居ろ・・・」

2人っきりにでもなったら、家でもスーパーでもハグやらキスやらお構いなしにしてきそうだから、どうかクロと2人っきりにはしないでくれ・・・

「そう?
じゃあ、俺は空いている手、握る」
「ん」

俺は難なく手を差し出すと、春と手を握った。

「春の手おっきいな」
「一応高校生ですから」
「春、お前、俺に喧嘩売ってるのか~・・・」
「別にー」

何気ない軽口を叩き合いながら、足を進めて店内に入ると、そこは人ごみ・・・

どこもかしこも、人、人、人。

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