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第1章 読みきり（上）

恐らくは、かつては何処かの王国に使えていた騎士なのであろう。
王国が滅びたのか、彼自身が解雇されたのかは不明だが浪人であることには変わりがない。

「デケェ声出すんじゃねぇ…聞こえとるわい」

顔をしかめながら、店の主人が奥から出てきた。
その眼光は鋭く、居酒屋の主人にしては腕が太く、傷が多い。
昔は猟師だったのだろうか？

「なんだと!? こっちは客だぜ！」

戦士風の男は立ち上がると、怒りの形相で主人に向かっていった。

「クレームを吐く野郎は客じゃねぇ！　殺すぞ！」

主人は豪快に叫ぶと、どこから取り出したのか大型の戦斧を男に突きつけた。

「なんたる屈辱だッ！」

男は腰の剣に手をかけた。
他の客は気にもとめていない。