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大蛇
第5章 虚しい夜
ルロイはあの日以来、オルガのことを忘れた夜は一日もなかった。

彼女の肉体を克明に思い浮かべては、なりふり構わず自分を慰めた。

彼の強欲な肉体は、今やオルガの肉体を何よりも欲し、渇望に喘いでいた。

彼が長らく軽視してきた肉欲に、今ルロイは復讐されているのだ。

今までは仕事一辺倒だった彼だが、勤務中であっても余計な雑念にまみれ、今まで通りの働きができなくなっていた。

「どうした、ソガ君。いつもの君らしくないね」

ボーモン大佐は、彼の悩みの原因を知ってか知らずか、彼の尋常ならざる様子に困惑しているようであった。

「いいえ、ご心配なく。少し風邪をこじらせてしまっただけです」

ルロイはそう言って帰り支度を始めた。

「大佐、お先に失礼致します」

ルロイは本部を飛び出し、家路を急いだ。

だが、ルロイを心配した同期のジャンが、走って彼を追いかけてきた。

「おい、ルロイ。何かあるなら言えよ。お前なんか昇格してからおかしいぞ」

ルロイは俯き、別になにもない、と呟いた。

「嘘つけよ。まあ、話したくないならいいよ、言わんでも。まあ、とにかく今夜は一杯いこうか、久しぶりに」

ルロイはしぶしぶ承諾した。

このまま独りで夜を過ごすよりも、誰かと居た方が、気がまぎれるかもしれない。

二人は町中のバーで杯を酌み交わした。

「いやあ、ルロイがつきあってくれるなんていつ振りだろうね。お前本当につきあいが悪いからな」

「何だと、飲んだくれのだらしないお前に言われたくはないな」

「ははは、痛いところを突かれたな」

二人は笑った。

こうして友と自然体で過ごすひと時から、ルロイは長らく遠ざかっていたことに気が付いた。

本能のままに・・・悦びを享受する・・・・・ルロイはふとオルガの姿を思い出し、顔を紅くした。

「何紅くなってんだよ、お前俺と二人きりになれてうれしいのか、ホモ野郎!」

ルロイはジャンの冗談にはっとした。

「ホモだったらどんなに楽か!俺は一人の女のせいでずっと苦しんでいるんだ!」

ルロイは自分の口から出てきた言葉に驚いた。

ジャン相手に何むきになっているのだろう。

ルロイは杯をぐっと飲み干し、気まずさを紛らわすために「お代わりお願いします」と叫んだ。
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