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大蛇
第6章 再び蜜を味わって
ルロイは一思いに殺されることを願った。

大佐はルロイの首根っこをぐいと掴む。

その瞬間、彼は自らの命はそこで終わったものと思った。

「面を上げよ、ソガ君」

ルロイは大佐の言葉にはっとし、恐る恐る頭を上げた。

「私は知っている、妻が最初に君を弄んだのだ。

私はただ、一寸君を試してみたのだよ。

君が自分の命のために妻を切り捨てる卑怯者なのか、それとも、すべての罪を一人で背負い込む勇者なのかを」

ルロイは頭が真っ白になった。

試していたのだと?

「君は私の妻、オルガを愛しているのだろうね」

ルロイは黙りこんだ。

「正直に言いたまえ」

「はい」

ルロイは、思わず大佐から目を逸らしてしまった。

彼はオルガを心から愛していたのだ。


「私は妻に、私以外の男と関係を持つことを許している。なぜなら私の男性としての機能は、永遠に失われたからだ。

彼女も三十手前とまだまだ女盛りだ、男の肌なしで一生を終えるのも哀れだろう。

・・・・・彼女の体は君たち若い燕どもにくれてやろう、しかし、彼女を愛してよいのは私だけなのだよ」

大佐はじっとルロイの眼を覗き込んだ。

「言っていることはわかるね、ルロイ君。

もし君があれを愛しているのなら、手を引いてもらおう」
ルロイは何も言えない。

「君がオルガを忘れるために、私が結婚を世話してやろう。

オルガに劣らぬ美しい娘を君に紹介しよう」

大佐の鋭い眼は、答えはイエスしかないとルロイに告げていた。

「私は、君の能力と人格を買っているからこそ、結婚話を持ってきたのだよ。

もし君が臆病な卑怯者なら、君はとうにこの世にいなかっただろう」

大佐はまったく口調を変えず、淡々と恐ろしい言葉を吐いた。

ルロイはどうすることもできず、ただ大佐の思うままになっていた。

彼にはオルガ以外の女性に興味などなく、結婚する気持ちは一ミリもなかった。

ルロイはこの場で自害したかったが、彼の強欲な心は再びオルガを手に入れることを欲し始めていた。

今死んでしまっては、未来永劫オルガに会えなくなるだろう。

彼は大佐に自分の思惑を読み取られることを恐れながら、「ありがたき光栄です」と言い、敬礼した。
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