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大蛇
第7章 二つの夜
*
翌朝、ルロイとアンヌはタイムの遺跡を訪れた。
まだ太陽の熱が大地を侵す前の、ひんやりとした空気が辺りに満ちている。
ルロイは緑の中に佇む古代の神殿を見上げ、その荘厳さに息を呑んだ。
人によってはただの古ぼけた岩の塊に過ぎないかもしれないが、
ルロイには太古の人々の息づかいや、今なお中に宿る神々の声が聞こえるような気がした。
二人は、神殿内へと進んでいった。
中は薄暗く、明るい外からやってくると、一瞬目が眩んで何も見えなくなる。
段々目が慣れてくると、ルロイは一面を覆う壁画に気が付いた。
それは、男女の交わりを描いたものだった。
男神と女神が、様々な体位でまぐわっている。
ルロイは奔放な彼らの姿に、目を見張った。
形振り構わず欲望のままにお互いを貪る様子は、猥雑さの中に神々しさも感じさせた。
息を呑んで見入っているルロイの横で、アンヌは今まで感じたことのない程の嫌悪感を抱いた。
蝶よ花よと育てられた彼女にとって、性は不可解なものであった。
男性にぎらついた眼差しを向けられることはアンヌにとって恐怖でしかなかったし、男性に触れられることも嫌いだった。
こういった異性への恐れは、処女なら誰でもあるものだが、彼女のそれは常軌を逸したものであったといえるかもしれない。
彼女は今すぐここから逃げ出したい衝動にかられたが、夫のことを思えばそれもできなかった。
アンヌは俯き、なるべく何も見ないようにした。
二人は神殿の中心に進んだ。
すると、タイムの女神の像が目に飛び込んできた。
彼女は穏やかで美しい女神などではなく、むしろ禍々しく恐ろしい姿をしていた。
その飛び出さんばかりの眼は血走り、口は獣のように裂け、手には大きな釜を手にしていた。
ルロイは彼女に殺されるかもしれないじりじりした恐怖を感じ、それと共に何とも言えない恍惚感にも浸っていた。
この破壊の女神に、ルロイはすべて貪り食われてしまうことを想像し、恐怖に引き攣ると同時に一物が僅かに膨らむのを感じた。
翌朝、ルロイとアンヌはタイムの遺跡を訪れた。
まだ太陽の熱が大地を侵す前の、ひんやりとした空気が辺りに満ちている。
ルロイは緑の中に佇む古代の神殿を見上げ、その荘厳さに息を呑んだ。
人によってはただの古ぼけた岩の塊に過ぎないかもしれないが、
ルロイには太古の人々の息づかいや、今なお中に宿る神々の声が聞こえるような気がした。
二人は、神殿内へと進んでいった。
中は薄暗く、明るい外からやってくると、一瞬目が眩んで何も見えなくなる。
段々目が慣れてくると、ルロイは一面を覆う壁画に気が付いた。
それは、男女の交わりを描いたものだった。
男神と女神が、様々な体位でまぐわっている。
ルロイは奔放な彼らの姿に、目を見張った。
形振り構わず欲望のままにお互いを貪る様子は、猥雑さの中に神々しさも感じさせた。
息を呑んで見入っているルロイの横で、アンヌは今まで感じたことのない程の嫌悪感を抱いた。
蝶よ花よと育てられた彼女にとって、性は不可解なものであった。
男性にぎらついた眼差しを向けられることはアンヌにとって恐怖でしかなかったし、男性に触れられることも嫌いだった。
こういった異性への恐れは、処女なら誰でもあるものだが、彼女のそれは常軌を逸したものであったといえるかもしれない。
彼女は今すぐここから逃げ出したい衝動にかられたが、夫のことを思えばそれもできなかった。
アンヌは俯き、なるべく何も見ないようにした。
二人は神殿の中心に進んだ。
すると、タイムの女神の像が目に飛び込んできた。
彼女は穏やかで美しい女神などではなく、むしろ禍々しく恐ろしい姿をしていた。
その飛び出さんばかりの眼は血走り、口は獣のように裂け、手には大きな釜を手にしていた。
ルロイは彼女に殺されるかもしれないじりじりした恐怖を感じ、それと共に何とも言えない恍惚感にも浸っていた。
この破壊の女神に、ルロイはすべて貪り食われてしまうことを想像し、恐怖に引き攣ると同時に一物が僅かに膨らむのを感じた。