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大蛇
第7章 二つの夜
「あら、嬉しいわ。私、旦那様に勝ったのね」

アンヌは笑ったが、その目は綻んでいなかった。

ルナールはアンヌのそんな様子に気が付く。

「さあ、まずはアペリティフといきましょうか」

ルナールは先程の小間使いを呼ぶと、彼女はラム酒とカナペを持って現れた。

「そんな、私お酒苦手なんですよ」

「ちょっとだけなら大丈夫よ、レディーのたしなみ」

ルナールはアンヌにウィンクし、小さなグラスにラム酒を注いだ。

アンヌは透明な液体を見つめ、恐る恐るグラスに口をつけた。

喉を焼くような熱さにはっとしつつも、飲んだ後の何ともいえないとろっとした夢心地が彼女を魅了した。

アンヌはお酒を飲みながら、ルナールとの他愛のない談笑を楽しんでいたが、段々意識が遠のいていくのを感じた。

やっぱり、飲み過ぎたのかしら・・・・・。

彼女はそのまま気を失った。

アンヌが目を覚ますと、先ほどルナールが座っていた長椅子に寝かされていることに気が付いた。

ブラウスの釦は外され、乳房が剥き出しになっている。

アンヌは恥ずかしくなり胸元を掻き合わせた。

「あら、目を覚ましたわね」

ルナールがアンヌの顔を覗き込んだ。

「胸元が苦しそうだったから、はだけたのよ。ここには女しかいないから、恥ずかしがらないでいいのよ」

ルナールはとても優しい目でアンヌを見ている。

夫のルロイには、これほど優しい目で見られたことがなかった。

アンヌはルナールの温かい愛情を感じ、涙ぐみそうになる。

「気になることがあるんだけど、聞いていいかしら」

アンヌは胸がどきっとした。

「はい」

「アンヌちゃん、旦那様とうまくいってるの?」

アンヌは一瞬黙り込んだ。

うまくいっているといえば嘘になるが、周りの人に余計な心配をかけたくなかった。

「正直に言っていいのよ、私は誰にも言ったりしないから。もちろんあなたのご両親にもね。何だか、アンヌちゃん無理しているように見えて」

アンヌは目頭が熱くなった。

今まで我慢していた感情が溢れ出て、どうにも止めようがなかったのだ。

彼女は自然に口を開いていた。

「私、彼を愛せないんです。そして彼も私を愛せないようです」

「それはどうして?」

「私の場合は、よくわかりません。彼の場合は、他に好きな女性がいるから私を愛せないようなのです」

「そうなの?」
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