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大蛇
第7章 二つの夜
「はい。実は昨日、私は彼と初めて男女の営みをしたのですが、その時も別の女性の名前を叫んでいました。私はオルガさんという女性の代わりにすぎなかったようです」
ルナールはアンヌの告白に驚く。
彼女はなんと不幸な結婚をしたのだろう!
初めてのセックスが、他の女の代用品としてなんて、辛すぎる。
「その時、どうだった?つまり、旦那様と行為をしているとき」
「・・・・・正直、苦痛しか感じませんでした。私にはどうして世の女性が男性を愛するのか、よくわかりません。私はもっと、男性も女性のように柔らかく、穏やかなものだと思っていました」
「つまり、アンヌちゃんは男性が苦手なのね?」
「そうなのかもしれません。今まではっきり考えたことはありませんが。あの力に溢れた腕や、剣呑な下半身のものが恐ろしいのです」
ルナールは、アンヌの考えがあまりにも若い頃の自分と似通っていることに気が付いた。
彼女が今は亡きルナール氏と結婚した当初も、アンヌとまったく同じことを思っていた。
「私にもあなたの考えがよくわかるわ」
アンヌは、初めて自分に共感してくれる人に会えたことが嬉しかった。
「男性の体は硬いし、優しさが欠如しているものね、だから私は女性と寝る方が好きなの」
突然のルナールのカミングアウトに、アンヌはぽかんとした。
「え?」
「きっとアンヌちゃんも同じだと思うわ」
ルナールは、瞬きするのも忘れているアンヌの頬に、そっとキスをした。
「何て可哀そうな子なのでしょう、アンヌちゃん。私があなたを慰めてあげるわ。愛の行為は男女のものとは限らないのよ、きっと私となら気持ちいと思えるはず。優しくするわ」
ルナールはアンヌの唇を奪った。
アンヌはびっくりしたが、ルナールの柔らかくとろけるような舌の感触に頭がぼうっとなった。
こんな気持ちよさは、生まれて初めてだった。
結婚式で形式的に交わした夫とのキスには、何も感じなかったのに!
アンヌはマリー・ルナールの腕の中に身を委ね、初めて蜜の味を知ったのだった。