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大蛇
第3章 睨まれた男
*
ボーモン大佐の執務室に初出勤したルロイは、いつもより大きな声で大佐に挨拶した。
「元気があって良いね」
大佐はルロイに笑いかける。
「昨日はありがとうございました」
ルロイが礼を言うと、大佐は束の間遠くを見つめ、
「こちらこそ来てくれてありがとう。妻も君を気に入ったようだよ」
と言った。
ルロイはボーモン大佐の口から出た「妻」という言葉に動悸が激しくなる。
夢の中の奔放なオルガが一瞬ルロイを捕らえた。
ルロイは目を瞑り、頭の中のオルガを追い払おうとした。
大佐の妻を冒涜することは、即ち上官を冒涜することに他ならない。
ルロイは温かいコーヒーで気分を入れ替え、誰よりも仕事に打ち込んだ。
その一か月後、ルロイがオルガのことも忘れかけてきた頃、またしてもボーモン大佐から夕食を招待された。
ルロイは夫人に会うことを恐れていた。
会えば彼女に心惹かれてしまうことは明らかだったからだ。
だが、上官からの誘いを断ることも彼にはできなかった。
色々迷った末、結局ルロイはボーモン邸の前に約束の時間十五分前にやってきた。
オルガは、門前に佇むルロイ・ソガの姿をサロンから眺めていた。
「あなた、ルロイ・ソガですよ」
オルガは夫にそう知らせるが、ボーモン大佐はすまない、と彼女に謝る。
「申し訳ないが、急に会議が入ってしまった。
私が帰ってくるまで、君一人でソガ中尉の相手をしてやりなさい」
大佐はそう言いながら、オルガにウインクしてみせた。
オルガは夫の意味ありげな目くばせに、胸がざわつくのを感じた。
ボーモン大佐は裏門から出ていき、ルロイと顔を合わせることなく自宅を後にした。
私の可愛い部下は、君のものだ、オルガ・・・・・。
ボーモン大佐は、妻に悪くない贈物を捧げることができ、内心満足であった。
その頃、ちょうどルロイはボーモン邸の呼び鈴を鳴らしていた。
彼の心臓はバクバク音を立てている。
戦場でさえこれほどナーバスになることはなかったのに、たった一人の女の前で、情けない程緊張している・・・・・
彼は自己嫌悪に陥っていたが、その時ボーモン家の執事がやってきた。
「奥様が中でお待ちです」
奥様?ルロイは一瞬耳を疑った。
おれは旦那様の招待客のはずだ・・・・・。
ボーモン大佐の執務室に初出勤したルロイは、いつもより大きな声で大佐に挨拶した。
「元気があって良いね」
大佐はルロイに笑いかける。
「昨日はありがとうございました」
ルロイが礼を言うと、大佐は束の間遠くを見つめ、
「こちらこそ来てくれてありがとう。妻も君を気に入ったようだよ」
と言った。
ルロイはボーモン大佐の口から出た「妻」という言葉に動悸が激しくなる。
夢の中の奔放なオルガが一瞬ルロイを捕らえた。
ルロイは目を瞑り、頭の中のオルガを追い払おうとした。
大佐の妻を冒涜することは、即ち上官を冒涜することに他ならない。
ルロイは温かいコーヒーで気分を入れ替え、誰よりも仕事に打ち込んだ。
その一か月後、ルロイがオルガのことも忘れかけてきた頃、またしてもボーモン大佐から夕食を招待された。
ルロイは夫人に会うことを恐れていた。
会えば彼女に心惹かれてしまうことは明らかだったからだ。
だが、上官からの誘いを断ることも彼にはできなかった。
色々迷った末、結局ルロイはボーモン邸の前に約束の時間十五分前にやってきた。
オルガは、門前に佇むルロイ・ソガの姿をサロンから眺めていた。
「あなた、ルロイ・ソガですよ」
オルガは夫にそう知らせるが、ボーモン大佐はすまない、と彼女に謝る。
「申し訳ないが、急に会議が入ってしまった。
私が帰ってくるまで、君一人でソガ中尉の相手をしてやりなさい」
大佐はそう言いながら、オルガにウインクしてみせた。
オルガは夫の意味ありげな目くばせに、胸がざわつくのを感じた。
ボーモン大佐は裏門から出ていき、ルロイと顔を合わせることなく自宅を後にした。
私の可愛い部下は、君のものだ、オルガ・・・・・。
ボーモン大佐は、妻に悪くない贈物を捧げることができ、内心満足であった。
その頃、ちょうどルロイはボーモン邸の呼び鈴を鳴らしていた。
彼の心臓はバクバク音を立てている。
戦場でさえこれほどナーバスになることはなかったのに、たった一人の女の前で、情けない程緊張している・・・・・
彼は自己嫌悪に陥っていたが、その時ボーモン家の執事がやってきた。
「奥様が中でお待ちです」
奥様?ルロイは一瞬耳を疑った。
おれは旦那様の招待客のはずだ・・・・・。