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五十嵐さくらの憂鬱。
第11章 …11
「あ、あの…」

全く状況を飲み込めていないさくらは
冬眠しすぎて20年ぶりに土から出てきました的な動物のごとく
キョロキョロとして落ち着かない。

「さくらちゃん、俺だよ、俺。かづき!」
「それはわかります…」
「さくらちゃんに聞きたいことあってさー」

不機嫌どころではない樹を前にして
さくらは凍りついた。
さらに、その樹をものともせず
ニコニコ話している夏月には
失礼ながら
頭やばいんじゃないかという思いさえ浮かぶ。

「さくらちゃん、樹とつきあってて満足?」
「夏月、よせ…」

樹が迷惑だ、と言わんばかりの顔をする。

「樹とのセックス、気持ちいい?」

さくらは顔が真っ赤になった。
自分でもわかるほど、耳が熱い。

「気持ちいいんだ? 不満とか、いっこもないの?」
「夏月!」

たまりかねて、樹が少し大きめに諌める。
それにべーっと舌を出して
夏月はさくらを見つめた。

「不満は…ないです」

ーーーむしろ、自分の方に不満があるーーー

夏月はピンときたようで
さくらをじっと観察した。

「その顔は悩みがある顔だな!
ぺろっと言っちゃいなよ、今ここで!」
「え…いや、その…」

ーーーあんまり挿れてくれないとか
この人には死んでも言えない!ーーー

さくらの警鐘がわんわん鳴る。

「さあ!さあさあ!」

さくらは急かされてパニックになった。
夏月の顔が間近すぎて
別の意味でドキドキする。

「いや、私…自信なくて…それが怖くて…」

ぽろりと、また別の本音が出た。

「自信? セックスに?」

全身の血が顔に集まったのではないかと思うほど
顔中が熱い。
そしてそれは、肯定を意味していた。

「夏月、いい加減にしろ」
「もうちょっとだから、黙ってなよ」

こうなったいたずら好きの夏月がとまらないことを
樹は身にしみて知っている。

「例えば…舐めるのとか?
そう言えば樹、フェラ大好きなんだよ!」
「余計なことを…」

もうすでに樹は夏月を止めることを諦めていた。

「ふぇ…えぇっ!?」
「ええっ!?って、さくらちゃん、まさか、知らないとか言わないよね?」

それにうなづいた時、翔平に言われた事を思い出した。

『挿れらんないなら、舐めればいい!』
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