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五十嵐さくらの憂鬱。
第16章 …16
「翔平、苦しい…」

それでも翔平の力は弱まらず
俺だって苦しい、とぽつりと雪が落ちるように言われた。

さくらはたまらなくなった。

「…翔平」

ごめん、と言おうとすると
それを言わせないように翔平がさくらの頭を持って
胸に押しつける。
この苦しさは、呼吸がしにくいからだけではない。

「さくら、俺にチャンスをくれない?」

そう言うと、ふと翔平が力を緩めた。
さくらが見上げると
翔平のいつになく真剣な目と合った。

「チャンス?」
「デートしようよ、さくら。
お前の彼氏ほどじゃないけど、
俺だって、それなりにモテるよ?
比較してよ。
さくらの気持ちが固まってることくらい知ってるよ。
だけどさ、せめて、同じ土俵にくらいは
上がらせてよ」

それが、翔平の答えだ。
真剣な眼差し。
いつになく紳士な態度。
さくらは翔平を見直した。

「1日でいいから、俺に時間くれよ。ダメ?」
「…分かった」

よっしゃー!
そう言った声はいつものでっかい声で、
みるみるいつもの翔平だった。

「予定、合わせよう。
今度の土曜日でいいだろ?」

それにさくらはうなづいた。
ニコニコと翔平が笑うと
周りの空気まで笑うかのようだった。

「約束だからな。絶対だぞ」

その場でまさかの指切りげんまんをした。

「…のーます、指切った!」

そうして2人で照れくさくて微笑んでいると
どこかの小学生が
あー抱き合ってるー!
ひゅーひゅー!
と騒ぎ立てながら駆け出していったので
翔平が周り中に響き渡る声で

「うっせーガキ!
羨ましかったら早く大人になりやがれ!」

と叫んで小学生たちをビビらせた。
小学生相手に、本気になってプンプン怒る翔平に呆れて
笑いが止まらなかった。

その約束をしてから
翔平はすぐにさくらを帰した。

「絶対だからな、破るなよ」
「分かったって、しつこいなぁ」

耳タコになるほど念を押されて
さくらは翔平と別れた。
樹のマンションに向かいながら
ため息を吐いた。

「…そうは言っても…」

先輩に何て言えばいいのだろうか。
言わない方がいい。
心配をかけさせすぎているのは
重々承知していた。
だからこそ、黙っているのが賢明な判断だが
内緒で勝手に他の人とデートするなんて
先輩に失礼のような気がしてならない。

そんなもんもんとした気持ちのまま
約束の日になってしまった。
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