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五十嵐さくらの憂鬱。
第17章 …17
事件は、45日たたない内にやってきた。
食欲も戻り、あたりは冬の寒さが訪れ始めた頃だ。
もうすぐ、樹たちは卒業になる。
そんなことを考えながら
図書館で課題をこなしていた。

「起きてください」

そう揺り起こされて
顔をあげて自分が寝ていたことに初めて気づいた。

時計を見ると、21時近い。
図書館が閉まる時間で、よほど疲れて寝ていたのだろう。
司書が早く用意をして出て行くように告げた。

さくらはもそもそと起き上がると
寝起きでまだだるく重たい頭をもたげて
すぐさま帰りの支度を始める。

図書館を出たのはさくらが最後だったようで
その後すぐに電気が消された。
急に吹きすさぶ風が冷たく
一気に体の芯が冷える。

グルグルに巻いたマフラーに顔を埋めて
バス停まで向かった。
ところが、ちょうどバスは行ってしまったばかりで
次に来るまでに30分ほど待つ。
仕方なく、さくらは歩いて帰ることにした。

歩いても通える距離に
アパートを借りたことを
良かったと思っことは、何度もある。
乗り遅れた時は特にそうだ。

とぼとぼと薄暗い夜道を歩くのは心細い。
こんな時、樹がいたらな、と思ってしまう
よこしまな気持ちを首を振って追い払った。

いつか、ガードレールに腰掛けていた樹の姿が目に浮かぶ。
あの時は、危ないところを助けてもらった。

そんなことを思いながら歩いていると
交差点の脇のコンビニでたむろっている集団が目についた。
目が合ったような気がして
さくらは目をそらして慌てて通り過ぎようとした。

真綾の姿があったのだ。
それと、いかにもガラの悪そうな青年たち。

信号が早く青にならないかと、
心臓がばくばくする。

「あれ、ほら、やっぱり!」

そんな甲高い声が聞こえて
足音が横から迫ってくる。
信号が青になった瞬間、
駈け出す勢いで歩き出したところを
ぐいっと掴まれた。

「ほらやっぱり、五十嵐さくらだ‼︎」

掴んできた青年たちの隙間から
真綾の姿と、甲高い声が聞こえる。

「え、この子が稲田先輩の?」
「うっそ、超おとなしそうじゃん」
「でも結構かわいいよ」

そんなことを男たち4人がガヤガヤ言っている。
掴まれた腕を解こうとしたが
あまりの力の差に動くことさえできない。
よく顔を見ると、いつの日か
さくらに乱暴しようとした男たちだとわかった。
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