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第5章 月への道を

翌日、何事も無かったように
りえは事務所に来た。

そしてデスクに座り仕事を始めた。

ユウイチは何をりえに話したらいいのか分からずにいた。
弁解するにも、りえに弁解する関係でも無いし…


とりあえず、いつも通り仕事を始めた。



仕事をしていると
ドアが開く音がし、りえはドアに目をやると
タクヤがいた。

あの恐ろしい過去が思い出された。

タクヤはりえを見つけると

「りえ？りえか？元気だった？」

りえは顔を引きつらせながらタクヤを見た。
ユウイチもタクヤがりえに何かをするのでは無いかと
ジッと見つめていた。

「うん…元気よ…」

りえの言葉にタクヤは怖い顔をして近づいてきた。

途端にタクヤは
床に膝をつき頭を床につけた。

「りえ、ごめんよ。あんなに酷いことをして…本当にごめん。どんなに謝っても謝りきれないけど…
酷いことをして、ごめんなさい！」

タクヤは涙声になり土下座をした。

りえは、胸を手に置きながら
ジッとタクヤを見ていた。

自分も苦しんでいたが
タクヤも苦しんでいたんだ…

許せないけど、許そう…

りえは、タクヤに

「大丈夫よ。私は元気よ。タクヤくんも元気？」

りえの言葉に目を真っ赤にしたタクヤは
顔をあげ、涙を拭いながら
頷いていた。

「りえ、ありがとう。ありがとう。」

りえは重い心の奥が少し軽くなった。


タクヤは立ち上がっ
父親のユウイチに会いにきた要件を伝え
ユウイチに頭を下げていた。