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第5章 月への道を

ユウイチは事務所に帰り溜まった仕事を片付けた。

幸せな気持ちとタクヤに対して済まない気持ちが
心の中で交差していた。

「ふぅ〜」

大きなため息をつき
窓の外を見ると
大きな月が明るく庭を照らしていた。


いつの間にかユウイチは眠りについていた。
ソファに横たわり、毛布が掛けられていた。

早朝から来る
お手伝いの新井が多分毛布を掛けてくれたんだろう…

そして、もう少しと再び眠りについた。


女性の声で目が覚めた。
ボヤける意識に心地よいトーンの声だった。

りえが電話で仕事の話しをやり取りしてらいるようだ。
片手にペンを持ち、メモをしながら話している。

束ねた髪がゆらゆらと
りえが喋る度に揺れていた。

りえの姿にりえの声が心地良かった。


が…


事務所のドアをバタンと開け
キンキンする声でユウイチを呼んだ。

煩い声の方を見ると
昨夜約束をしていてすっぽかした女が
事務所まで押しかけてきていた。

りえも電話を切り
驚きながら振り返った。

ユウイチはゆっくりとソファから置き
女性の傍に行き謝っていた。

そして二人で事務所から出て行った。

りえは寂しい気持ちになったが
幸せな時間をユウイチと送れただけで
感謝するべきだと
気持ちを落ち着かせ、仕事に集中した。