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第5章 月への道を

「りえを…りえを支えてやってくれ」
ユウイチはタクヤに頭を下げた。

愛する女の為に
女が愛する男に頭を下げる父親を
本当にりえを愛していりのだと実感した。

タクヤは何も言わず苦笑いをしながら頷き父親を見た。

「りえを悲しませるなよ」
タクヤがユウイチに言うと
「お前が言うのか？」
と、笑った。

ユウイチは立ち上がり
「俺はりえとは法律上結婚していない。お前なら再婚は出来るぞ。」

ユウイチはりえの花嫁姿を思い出した。

教会のパンフレットにするからと
ユウイチとりえの結婚式風景の撮影した時
りえは眩しいほど綺麗で
実際に自分の花嫁になってくれたような錯覚になったなぁと。


あのままりえを攫って逃げてしまいたかった。
誰にも見せたくなかったし、誰にも触らせたくなかった。

その気持ちを押し殺し
りえを諦めようとし
ただりえを見ているだけで幸せだと思うようにしようとしたが、そう思えば思うほどりえが愛しく感じたのだった。

「りえと結婚しても親父はいいの？」
ユウイチは頷いた。
「俺のものになるんだよ？いいの？」
再度ユウイチは頷いた。

「俺はもうすぐに死ぬ。だからお前に…」

ユウイチは視線を床に落とした。