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朏の断片
第4章 #4
物心ついた時には、上田の世界の中心は美希だった。常に美希を基準として今まで過ごしてきた。だけど片桐のことは自分を基準にしなくてはならないんだと何となく頭では理解するものの、何をどう判断していいのかはまだ掴めずにいた。恋愛というものに対する概念がまったく培われてこなかったのに、好きも嫌いもわからない。簡単に割りきれないのは性格のせいだろう。上田は困った顔で片桐を見上げた。
「アンタが俺にするキスは気持ちいいよ。アンタが好きだって言うたび胸が痛い。抱き締められると何か落ち着く。だから俺はここにいたいんだ。……今はそれ以上はよくわかんねえよ」
「……それ、もう俺のことめちゃめちゃ好きやんか?」
数秒の沈黙のあと、上田は目を細めた。
「そうなの?」