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朏の断片
第2章 #1


基本的に片桐は普段は標準語で、大人には敬語だったりを使い分ける。時折素に戻ると関西弁が出た。


「めっちゃびびった……」


まだ距離がある。相手には到底聞こえない呟きを落としてから片桐は勇気を出して歩き出す。

すでに一度フラれた身としてはかなり勇気がいる。


「また来てくれたんですか」

「あの……さっきのお話……」


上田はうつむいたまま自分の靴先だけを見ていた。


「さっきはごめんなさい。びっくりしてしまって。急にデートだなんて言われたから……」

「その制服、もしかして女子校?」

「……はい」


上田は男にあんまり免疫がないのかもしれない。


「あの。私とデートしてください」


まさかの逆転シュートを決めた気分。片桐は耳を疑った。それを言いにわざわざもう一度来たのか。


「本当に?」

「はい」


一瞬目が合うと、その恥ずかしそうに潤む上田の目に、片桐の理性は飛んだ。キラキラと輝く空と川をバックに二人のシルエットが重なった。


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