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第10章 挨拶

あたしは隆盛に抱き付いていた。

「ん？どうした？」

「隆盛は、…凄いね。
そうだね…あたしは、自分の事しか考えてこなかった。両親に、感謝しなきゃ。あたしもきちんと挨拶したい。」


隆盛の少し垂れ目の瞳が、照れたように細められマジマジと見つめられた。


「新菜が素直だと…可愛い過ぎて襲いたくなる。」

「ふふっ…末長く宜しくお願いします。旦那様。」

「馬鹿…だから煽るな。
区役所に、婚姻届出しに行くぞ！」


あたしは、照れて顔を赤らめた隆盛に手を引っ張られ連れて行かれた。

外はまだ寒く、吐く息は冷たいのに
繋がれた手から、穏やかな温もりが上昇していく。

隆盛の振り返った笑顔が眩しかった。

どうして、この手を離せたんだろ…。

もう、離したくない。




あたしの父は、なぜあたしと母の手を手離したのだろう…。