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第11章 父

あたしの黒い心の叫びにも全く気が付かず、まだまだ二人の愛の劇場は上演中だった。

「 美由紀が、良いなら私は今すぐ帰るに決まってる。
嬉しいよ…こんな日が来るなんて。
本当に、許してくれるんか？
私は、帰って来てもええんか？」

「 帰って来てくれたら、嬉しい。
私、舞い上がりそうや。
夢やないよね。
本当に、帰って来てくれるんやね？」

母は、少女のように顔を赤らめ素直に喜んでいた。

「 一人暮らしで料理の腕も上がったよ。帰ったら美味しいご飯を食べさせてあげるから、楽しみにしてて。」


そう言って破顔する父に、ホッとした。

父は、母を愛してる。

まだ、愛してくれてた。

でも、あたしの事は…どうなのだろう。

ズキンと胸が痛んだ。