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第11章 父

「わかりました。
でも、一ヶ月は待って頂ける？
お見苦しい所をお見せしてしまったけど、私たち家族をやり直したいの。
新菜を、家族で送り出す準備をしたいのよ。
…待って頂けるかしら？」

母がそう言うと、父は

「一年待つのは無理ですか？」

「それは、無理です。」

と、あっさり拒否する隆盛。

「もうお父さん。
新菜のお腹には孫が居るかもなのよ。」

「そ、そうだな…。
あぁ…新菜、君がいいなら。

新菜…、あの時の事を怒って早く家を出たいのかい？

私は、君にも謝らなければ…。

新菜、あの時はすまなかった。

君に引き止められて
…本当は嬉しかったんだ。

あんな酷い事を言うつもりじゃなかった。

あの時の私は、酷く不貞腐れて病んでいたんだろうね。

私の事を、心配して構って欲しい癖に素直になれず、君を傷つけることを言ってしまってた。

君が生まれるから、お母さんと結婚したんじゃないよ。

お母さんを愛してるから、君ができて結婚したんだ。

これは、本心から思ってる。

あぁ…
君の成長を見守るのは、楽しかったよ。

大きくなって、お父さんの顔も見てくれなくなって…もうお父さんなんて要らないと思われてると思ってたんだ。

あぁ…こんな、駄目な父親だけど…父親として最後に君を見送らせて欲しい。

お父さん、帰って来てもいいかい？」

父の涙ながらの言葉に、あたしはなかなか返事が出来なかった。


「父さん…もう、いいよ
帰って来てよ。」


そのたった一言が、なかなか言い出せないほど涙が溢れて止まらなかったから。