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第11章 父

こんな奇跡が、あるだろうか？


「 正直に話して、謝るしかないな…。」

「うん…。」


あたしは頷くと、隆盛の手を応援する気持ちも込めて握りしめた。

あたしの手を握り返して、そっと手を離し姿勢を正すと


「あの…お詫びしておきたいことがあります。」

またもや座布団をよけ、手を着いて頭を下げた。

「いったい何だね…お詫びとは？」


父が、不安そうに尋ねた。


「実は……。」


隆盛は、洗いざらい打ち明けた。

昔、あたしとは付き合っていたが別れてしまい、昨日、再会をして結婚を決めてしまった事。

そして、今日、籍を入れてしまった事…。


両親は、黙って話を聞いてくれた。


「申し訳ありません。了解も得ずに勝手なことをしたと重々承知しております。

ですが、私は新菜さんと別れた事をずっと後悔しておりました。

私の心の中は、ずっと新菜さんしか居りません。

昔も、今もです。

やっと巡り会えた新菜さんと、気持ちが通じ合って、どうしても一緒になりたくて…多少焦っていたのかもしれません。

本当は、新菜さんのお誕生日を、結婚記念日にしたいと思ったんです。

でも、間に合わず翌日に籍を入れました。一年待てばいいのかもしれません。

…でも、もう待てませんでした。申し訳ございません。

新菜さんのお誕生日は、私にとっても特別な日でした。昔、私達が付き合いだした記念日でもありますから…。

ですから、つい強引にでも結婚記念日にしたかった。

毎年、新菜さんのお誕生日と結婚記念日は、大切な日にします。

失礼かもしれませんが、お父様にならこの私の気持ちが分かって頂けるのではないでしょうか？

お父様が、心の中で奥様を想っておられた気持ちに負けないくらい、私も新菜さんを愛しております。

どうかこの結婚を、お許し下さい。」