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第10章 挨拶

「何よ親に向かって、オバさんなんて…。で、ナニ？早く用件を言いなさいよ。」

「う、うん。今日ね…会って欲しい人がいるの…。」

一瞬、母が黙り込み静かになった。

「母さん？聞こえてるの？」

沈黙が、怖かった。
まさか、この年になって反対とかされないよね…。

「 聞こえてるわよ。… びっくりして。そっか… あんたがねぇ…。で、幾つになったんだっけ？ 」

拍子抜けするような質問に、ホッとしながら

「 もう30よ…。 帰ったら休むでしょ？夜、挨拶に来てもらおうか？ 」

「そうねぇ…。 そうしてもらえると助かるわ。母さん、夜勤明けで少し休みたいから。で、どんな人なの？」

「うん…同じ高校の同級生だった人で、今は滝沢産婦人科の先生してる。滝沢 隆盛って言う人よ。」

まさか昨日、元カレとヨリを戻して結婚まで決めましたなんて、夢でも見てるようなマイナス情報を素直に報告する義務はないだろうし。

これ以上深く、追求されるとボロが出そうだ。

自分でも、実感がわかないのだから…。

でも、もう決めたことだ。

「まぁ、お医者様なの？隆盛さん？凄いじゃない。母さん、家で待ってたらいいのかしら？」

「そうだね。行く時間が来まったら連絡するね。たぶん、7時前後かな？

…あのさ…ちなみに…父さんって…連絡つくの？ 」

「 えっ……。」

二度めの沈黙は長くて、聞くべきでは無かったと後悔し始めた時に、母は重い口を開いた。

「お父さんの連絡先、分かるわよ。」