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秘密の香り
第16章 秘密の重み
明日、敦は午前中に幼なじみがやっている
お蕎麦屋さんを訪ねて
新しくできた温泉に寄ってくると言っていた


圭吾さんと少しでも長く…
居れたらいいな


携帯にメールが届く

『待たせてごめんね、もうすぐ着きます』

私はお会計を済ませ
駅の改札へ向かう

少しして
沢山の人が出てきた

流れる人々に目をやると
圭吾さんを見つけた

そして圭吾さんも
私を見つけ
優しく微笑む

「ごめんね、遅くなって」

「いえ、大丈夫です」

「お店で待っていてよかったのに…」

「いまお店から出たばかりです…」

「寒くなかった?」

「はい…」

「行こうか…」

手をにぎられ
私たちは歩き始めた

「嬉しいよ…こうやって会えて」

「私も…です」

それから
家に着くまでお互い無言だった

嫌な沈黙ではない
心地いい空気がふたりを包む

寒い夜道だったが
繋いだ手はとても温かく
心がとろけそうだった

マンションのエントランスを通り
エレベーターに乗る

着いた…

「どうぞ…」

「お邪魔します…」

玄関のドアを開けてもらい
中へ入ると

後ろから優しく抱きしめられた

「圭吾さん…」

圭吾さんの腕に手を伸ばす

「会いたかったよ…」

「いい香り…」

ちゅ…

耳たぶに優しいキス

幸せ…

「私も…すごく会いたかったです…」

しあわせで
満たされた…





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