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仔猫と狼
第16章 こぼれ落ちる









「にいちゃん、頑張りな。」














後ろからそんな声が聞こえる。











正直、いろいろなこと言われて頭の中はごちゃごちゃになった。













でも、早く片岡のそばに行きたくなった。














タクシーのおじさんに小さく頭を下げて早歩きで産婦人科のところへ向かった。













受付が済んだのか待合室の椅子のところに片岡は座っていた。















座っているその横顔は、確かに運転手の言う通り死にそうな顔をしていた。














片岡…、お前は今何を考えている?













溢れる俺の本音を受け止めてくれても、お前は俺に何も言わない。













それは心地よくもあり、そこの見えない沼のようで。












片岡の隣は相反する感情の混在するのに抜け出したくない、そんな風に思えるんだ。













「片岡…。」

















「…。」














何も言わない片岡はゆっくりとこちらに顔を向ける。














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