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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第4章 亀裂
どれだけの時間...俺はクローゼットの中で過ごしていたのだろう。
もう俺以外無人になってしまった寝室に先程の光景が繰り返し俺の脳内に浮かぶ...
自分の権力で...腕力で...愛華を辱しめ...苦痛を与え...尊厳を奪う和雄...
それを受けて泣いて...屈辱を与えられているのに...受け入れる事しかできない愛華...
そしてその光景を...何度も俺を救ってくれた...俺を一人の人間として見てくれた愛華が傷付くのを見ても...何もできずに泣いている...弱い自分。
「あ....あぁ....」
掠れた声が自分の物だという事すら気付かず、両手で頭を抑える。
俺はなんて弱いんだ!!変わるんじゃなかったのか!!
こんな人生に...暖かい手を差しのべてくれた愛華の為なら...変われるんじゃなかったのか!!!
自分を責める...責める...責める...その怒りの矛先は...しだいに和雄に向いていった。
そうだ...父さんを殺せばいいんだ...
もう父さんは俺の話を聞いてはくれない...これからも愛華を傷付けるのなら...俺がこの手で...
こんな俺の人生なんて壊れしまっても良い...
『約束...忘れないで...ね...』
母の最後の言葉が浮かび...沸き上がった殺意は直ぐに引いてしまった。
まただ...また母さんの言葉が俺を..."邪魔"する...