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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第5章 一時の温もり
もう...俺に愛華を好きになる権利は無い。
俺は誰も守れないし...誰も愛する事もできない...そして、誰にも愛される資格も無い。
「優真君...」
あんな光景を見てしまっても、今日も登校した俺が家路に付く頃、後ろから愛華に呼び止められた。
どんな顔をすれば良いのだろう...そう思って返事すらできない俺に駆け寄った愛華は、少し申し訳なさそうに言った。
「あの、昨日の映画のチケット今持ってる?もし持ってるなら...急で悪いんだけど...今から一緒に行ってくれる...かな?」
チケット...昨日から鞄に入れっぱなしにしてあるが、俺にそんな権利は...
「持ってるよ...うん...行こうか」
「本当?ありがとう優真君」
...そうだ...今日で最後にしよう...
今日を愛華との最後の思い出にして、明日から関わる事を辞めるんだ。
わかっている...愛華に未練があるから...断れないって事くらい...
今日の夜に自分がどれ程愛華と関わる資格の無い人間か...何度も自分に言い聞かせよう。
昨日の事なんて微塵も感じさせない愛華に引っ張られるように、俺達は映画館に向かった。