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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第7章 決別
上機嫌な麗奈を助手席に乗せ、久しぶりにあの家へと車を走らせる。
麻耶はもういないらしく、全く手入れされていないようだ。
寝室に向かう麗奈の後に無言で続くと、部屋に入った麗奈は必死に思いだそうとするように首を傾げ、壁に掛けてある絵画を裏返した。
額縁を外すと、一枚の写真が取り出される。その光景を見た俺はシニカルな失笑を浮かべてしまった。たかだか10歳の頃の俺を縛り付ける為にこんな面倒な場所に写真を隠していたなんて...
「はいっ、返してあげる」
「...もうこれを最初で最後にして...」
その写真を直視すれば情けない顔をしてしまいそうなので、直視しないようにして懐にしまう。
麗奈は俺の言葉を聞いて何か反論しかけたようだが、俺が代わりに懐から出した金を見ると、一瞬で瞳を輝かせた。
俺がベッドに放り投げた金額は三百万...今の俺にとってははした金だし、手切れ金も含んでいる。
「うわぁっ...優真君ありがとう」
心理学を学んだ俺には上部だけの感謝にしか見えないが、気にも停めずに振り返った。
「じゃあ...」
「えー?もう帰っちゃうの?」
金を受け取った瞬間から再び態度が大きくなった麗奈は、俺の背中に抱き付いて...不快な甘えた声を出す。