この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第10章 地獄の創立
声...ノイズのような音...啜り泣く声...煩い...本当に...
目が覚めると込み上げる不快感に朝から苛立ちを覚える。
苛立ちを抑えるように体を起こし、煙草に火を着けた。
胸の内に停滞する正体不明の感情は煙と共に吐き出す事はできなかった...
最近はいつもこうだ...何か夢を見ていたはずだが、目を覚ますとその夢の内容は思い出せない。
単純に無意味な夢なのか...それとも今まで殺した者達が俺にまとわりついているとでも言うのだろうか。どちらにしろ、近くにたかる蝿のように鬱陶しい。
寝覚めが悪いのは新しい住居のせいでもあるのかもしれない。
一人ではあまりにも広い館に住み始めてまだ二日なのだから。
この館を建設する計画を立ててからもう六年が過ぎ、三十歳になった俺は既に人里から離れていた。
企業への施しの為に女を得るという行為は、その後の処理等が面倒で、もうあまり関わりたい物ではない。
もうすぐ...早ければ今日中にも、ただ俺がしたいように生きる...そんな新しい人生が始まる。
一生自由に暮らしても困らないだけの資金は蓄えており、立場上の権力を維持したまま...俺は実質的に財閥から身を引いていた。
そして...名前すら...捨てた。