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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
ナツSide
今でも、遠い遠い昔を思い出す――。
僕はこの国の隣国の、第二王子として生まれた。
しかし生まれつき病弱で、たくさんの薬を飲んで育ったから、元来のものに加えてその薬の副作用である浮腫(むくみ)とで、身体がぱんぱんになって、丸々としていた。
締まりのない体型でいつも鼻をたらたら垂らしている僕は、どう見ても不格好で、さらに人見知りの上にどもりがちでうまく自分の感情を言葉で表現出来ず。加えて愚鈍この上ない僕は、王子でなければ完全に見捨てられていただろうと思う。実際僕は、親からも使用人からも疎まれていることはわかっていたから、余計人と接するのは苦手だった。
そんな僕を誰からも庇ってくれたのが、年が離れた長男、僕の兄だった。
――ナツは俺様の弟だ。こんなに可愛いナツを傷つけるものは俺が許さん。ナツを悲しませる輩は、必ず俺様の報復を受けさせる。わかったな!!
色素が薄い僕とは正反対の、黒の色彩を色濃く背負い、切れ長の目に宿る鋭さは、まるで狙いを定めた鷹のように。
低い声で凄んで本気で怒れば、騎士団長とて竦み上がる……十代で王者の貫禄を身につけていた兄は、とにかく僕には優しく、僕の前でいつも笑っていた。
――ナツ、俺様はお前を守ってやるからな。だから安心してろよ。お前は俺様の大事な大事な弟だからな。自分に自信持てよ?
精緻に整ったその顔、そして野性的で精悍な身体。
兄は剣術だけではなく、素手ででも十分大勢を叩きのめすほどに強く、鍛えられたその鋼のような肉体は、類い希なる強靱さを誇った。
その上に兄は頭もよく。勉強をしている姿などほとんど見たこともないのに、その知識量や頭の回転の速さは凄まじいものがあった。
強くて優しくて格好よく頭もいい、次期後継者に相応しい貫禄を持つ兄は、少し強引な部分もあるけれど、誰をも魅了する。
そんな兄だけが唯一、僕を可愛がって愛してくれて。
――お前は、俺の大好きな弟なんだからな。
僕はそんな兄が大好きでたまらなくて、兄の行くところすべて、後ろにちょこちょこついて回っていたんだ。