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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
ここまで他人に執着を見せる兄は初めてで、それくらい彼女を渇望していることをうまく表現出来ずに、しーちゃんを虐めることで気を引こうとする兄は、僕とはまた違う種類の不器用な男だったらしい。今まで"大人の愛"だとかいうものは色々経験していると僕にも自慢していたのに、その割には必死でしーちゃんを追いかける姿は、僕以上に子供っぽい。
忙しく繰り広げられる"鬼ごっこ"の動きに、ついていけずにいる愚鈍な僕は、いつもふたりを黙って観察出来ている分、僕の方が大人だったんじゃないかと今では思う。知能がどうであれ。
――おい、こらシズ、待て!!
――いやぁぁぁぁぁぁ!!
――待たねぇと、追いかけるぞこら!!
――もう追いかけてるじゃないのぉぉぉぉ!!
ぴゅーぴゅー。
僕の目の前で、左から右から、ふたりが駆け抜ける際に生じる風が、太っている僕をぐらぐら揺らすまでに激しく吹き荒ぶ。
命をかけたような追いかけっこ。
飢えた鬼に追いかけられて、全力逃走しているみたいだ。
結果はいつもしーちゃんが兄に捕まって。わあわあ泣くしーちゃんのひっかき傷を頬につけた兄が満足そうに胸を張って終わるけれども、そこから先は、勝利者のご褒美タイム。
――と、殿方の肩を揉むなんて……っ。
――そうか。お前は男を知らないのか。よしよし。お前のすべてのハジメテは、これから先ずっと俺様のものだ。今のうち俺様の身体に慣れておけ。
――レディのほっぺを抓るなんて!!
――このほっぺは俺様に抓られるために存在する。お前はもう俺様のものなんだ。いいか、他の男には髪の毛一本触らせるなよ!? ああ、だがナツは特別だ。俺様の弟は、お前の弟でもある。
――だったらナツ、触られるならナツがいい。
――なんだと? ナツはよくてなぜ兄は駄目だ。お前にお仕置きのぐりんぐりんをくれてやる。
――いやぁぁぁ!! ナツ、助けてぇぇぇ!!
――ナツ、助けたら、お前もぐりんぐりんだぞ!?
ふたりに挟まれた僕は、居たたまれない。勿論仲裁できるほどの速い動きも思考力もあるはずがなく。できるのはただ鼻をたらたら垂らして、話してくる者の顔を見るぐらいで。
それでも――。