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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
――ナツ、あっちお散歩しよう?
――ナツ、俺もいた方が楽しいよな。
ふたりはなにかと僕を気にしてくれて。
――ナツ、あっちいってお人形さん遊びしよう?
――ナツ、こっちに来い。お兄ちゃんが絵本読んでやる。
――ナツ、あたしが作ったクッキー食べる?
――ナツ、それは腹を壊す元凶だから、すべて俺に寄越せ。
完全に僕は当て馬だということ、幼いながらわかったけれど、それでも僕は大好きなしーちゃんと兄が、僕を忘れずに名前を呼んでくれるのが、本当に嬉しくて仕方が無かったんだ。
しーちゃんに会うまではあんなにうきうきとした顔で馬車に乗ってきた兄。あれだけしたい放題してしーちゃんに背を向けられれば、頭を大きく項垂れてかなりのダメージを受けていたこと、しーちゃんは知らない。
そこまでショックならもっとしーちゃんに優しくすればいいと思うのに、すればしたで、しーちゃんに怪しまれる。
――ナツ、聞いて。ハル兄がおかしいの。毒キノコでも食べたのかしら、あたしのことを真剣な顔で可愛いなんて言うのよ。見て、この鳥肌。どんな魂胆かしら。
女が色目を使って求めに来るモテモテな兄が、真顔で可愛いと褒めてここまで毛嫌いして嫌悪の顔をする女の子は初めて見て、僕は思わず弾けたように笑い転げた。
――ナツ、あんたは笑っていた方がいいよ。凄く可愛い。うふふふ、なんだかあたしまで嬉しくなっちゃうわ。
しーちゃんに褒められて、僕はいつも笑うようになったんだ。
笑うようになったら、友達も出来た。
それはしーちゃんのお父さんが一番頼りにしているらしい大臣の息子だ。
僕と同じ歳の彼はとても頭がいいということで、しーちゃんの話し相手兼教育係に任命されていたらしいけれど、彼は作り笑いをしてすました顔を見せてばかりで。
――おい、てめぇ…。ナツの同い年のガキのくせに、なんだその気持ち悪ぃ表情は。よし、お前をナツの友達に任命してやる。俺様達が来たら、シズともてなせ。いいか、ナツと仲良くするんだぞ? ナツは凄くいい奴だからな。