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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
――シズ。俺の嫁になれ。
――嫌。それならナツの嫁になる。
冗談であっても、凄く嬉しかった。
ほんの一瞬、僕は幸せな未来を夢見たけれど、兄は凄惨な翳りを顔に落として、屈辱に耐えているようで。
……喜ぶことをやめた。
だが本人に却下されたからといって、それにめげる兄ではなかった。今度は外堀を埋めようと謀略を巡らす。
――王、シズを俺の嫁にしたい。俺の正妃として、我が国に連れることを了承頂きたい。この婚姻により、俺達の国は末永い友情で結ばれるだろう。
国を継ぐ王子として、真剣にしーちゃんの父親に懇願を始めた兄。
きちんとした礼装で、きちんとした手順を踏まえて、正々堂々と兄は真っ正面から婚姻を申込みに行った。
どこをどう見ても、否のない完璧な王子として。
――それは駄目だ。諦めてくれ。
だが王は頑として、首を縦に振らなかった。
仲がいい友達の息子だというのに、兄を可愛がっていたのに。
あの時の王の目は、ぎらぎらと怒りすら湛えた様子で、僕はこっそり見ていて、思わず鳥肌がたった。
そんな兄の苦戦と同時に、親友は暗い表情を見せるようになった。
――俺も、婚約話自体を白紙に戻された。他の縁談話も持ちかける男をことごとく王は潰しにかかっているそうだ。このままだと、食い下がらないハルさんが心配だ。ああ、それ以上に、王のあの目…。もしかして王は、あのひとのことを……。まさかな。
そこから先、親友が濁した言葉。
僕もまた同じ事を推測したその先は、恐ろしくて口に出せなかった。
まさか、実の父親が実の娘に本気で懸想しているかも、など。