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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
そこからは俺は、あまり笑わなくなった。
ただ大公の恩に報いたいと気持ちだけでひたすら勉学に励み作法を習い、それまで字も知らずにいた俺が、あっという間に書庫の沢山の本を見終えてしまえるまでになった。
――モモ。お前はなんて優秀なんだ。もう城にいけるな。
俺はひとより物覚えがいいらしい。
大公に褒められることが生き甲斐だった。
だから俺は隠していたんだ。
母から、絶対ひとには言ってはいけないと言われた俺の秘密を。
人の目から逃れるために、あばら屋に住む羽目になっていたことを。
――なぁ、モモ。内緒話を教えてやろう。
あれは、俺が姫の家庭教師にときちんと辞令が下りた日の夜だった。
俺へのお祝いということで、大公は酒を飲んで饒舌だった。
――我が偉大なる従弟の国王様の妻は、なんと淫魔だ。それを隠すために、よほどのことがない限り、王妃は表には出て来ないが。
淫魔……?
――淫魔とは、人外の悪しき魔だ。禁忌を好み、異性の精を糧とする。そしてそれを力とするのだ、不可思議な魔の力とな。淫魔の力が強まれば、魔に近しいものが次々に禁忌に走り自滅する。この国は滅びるぞ。
俺は言った。
わかっているのなら、なぜ王に言わないのかと。
――わかっているからこそさ。
――私に怪我を負わせたのは従弟だ。そして淫魔にうつつを抜かしていたあいつが国王になった。だが天は私を見放さない。淫魔との間にできたのは姫!! どうだ、チャンスだぞ、モモ!! お前はあの難関な学術試験を満点で突破し、最年少で城内に入った。お前、姫の家庭教師をして、姫に取りいれ。あとは私がまとめてやる。
ああ、大公は。まだ幼い俺を使って、従弟に復讐をしようとしているのだと、初めて気づいた。
俺を姫の婿にして、外戚としても力を持とうとしているのか……。
だがそれを咎めるつもりはなかった。
母親に捨てられて俺を飢え死にせずに学と住まいを与えてくれた大公に、俺は従う以外の気持ちはなかった。
そして――出会ったんだ。
――初めまして、シズル姫。俺はモモといいます。今日からシズル姫にお勉強を……。
俺を魅了してやまない、小さき姫に。
――シズル、お勉強大嫌いだから。ばいばーい!!
……俺を翻弄し続ける我が儘姫を。