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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)


 雪のように白い肌。黒檀のような黒い髪と瞳。血のように赤い唇。

 その声音は鈴のように軽やかで。


 愛さずにはいられない、そんな星の元に生まれついたような姫。

 女に免疫ない俺など、いとも簡単に、ひと目で心をもっていかれた。


 だがそれがわからずに、夜眠れなくなるほどに姫を思い出しては、心臓が苦しくなって、食欲もなくなり、発汗して熱っぽくて……。

 心配した大公が連れた医者に、そう訴えれば、


――モモ様。それは姫への「恋患い」です。


 そう耳打ちされた。だが大公や周囲の者には、慣れぬ城勤めの緊張から来る疲労だと言ってくれたおかげで、俺が姫に恋している公然とした事実は伏せられた。


 俺……、恋しているのか?

 だから城で、姫がいないと胸が切なくなって、姫を見つけると体温が上がるのか? こんな疲れる身体の変化が、「恋」?


 戸惑いながらも、変化がある毎日が、俺はなにか嬉しかった。

 姫と会うために城に行く日が、本当に楽しみで。

 うきうきとした気分が、まるで母を思いながら料理をしている気分とも似ていたが、姫を想う方が心が熱く。その違いは俺でもわかった。


 週三回の家庭教師。

 俺は、待ち遠しいその日に、恋する姫に会いに行く。


 恋の当惑は、やがて確信に変わり、胸にずっしりとした重みをもった。


 仕事とはいえ、初めての恋を経験する幼い身の上とはいえ、男に属するものであれば、それなりに……姫との甘い場面を期待してしまう。

 1対1で教えている以上、どうしても顔を覗き込んだり接触したり機会は増えるし、そこでドキドキしすぎて教えられなくなったり、変なことを口走ったらどうしよう……。


 ……そんな懸念は、哀しいくらい現実にはならない。


 まるで勉強しようとしない、遊びたがりの姫。

 おやつがかかれば、頭の良さを発揮するのに、それ以外は寝るか紙に悪戯がきをして笑っているか。本能の赴くままで。

 そして、少し目を離せば……すぐ逃げる。

 これならまるで、あのあばら屋の時に食べ物を盗みに来ていた、野生の猿のようだ。
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