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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
だが、手は出さなかった。
がっついて、姫に嫌われたくなかった。
姫にこんな俺と結婚したくないと騒がれるのは、精神的にきつかった。
だから大公にお願いして、姫には俺が許婚になったことを伏せて貰うようにしていたんだ。
少しずつ、寄り添っていこう。
焦ることはない。
少しでも、俺を好きになって……。
いつも祈りをこめて姫を見つめていた。
我慢して我慢して我慢して。
そしていまだ勉強をせず逃げ出す姫が、ようやく俺に心を許してくれたのか、彼女にとって特別な場所に連れてくれた。
それは薔薇園。
そこには時折国王も遊びに来るらしいが、俺はそこで国王の姿はみたことがなく。そして国王にでも、この場所を知っていることを告げては駄目だと、姫に念を押された。
――ここはね、あたしとモモちゃんの秘密。
父である国王にも黙って逢引しているような、背徳めいた裏切りにぞくぞくしながら、姫直々に秘密を託された…その特別が嬉しくて。
国王が自ら、王妃にすら内緒で作り上げたらしい薔薇園に咲き誇る白薔薇は、姫にちなんで"白雪"と名付けられているらしく、白薔薇に囲まれて破顔する姫は、なにより可憐で可愛くて。
脳を痺れさせてくらくらさせる甘い香りが、薔薇の香りなのか、姫の香りなのかわからず、何度も何度も俺の"男"を惑わされ、身体を熱くさせられた。
この腕に抱きしめたくてたまらなくなるんだ。
あのつんと尖った赤い唇に、自分の唇を重ねてみたくなる……。
まるでこの薔薇は、媚臭。
俺の"男"の動き出さぬように必死に抑制しながら、姫とブランコをしたり花冠を作ったりして。
俺に眩しい笑顔を見せてくる姫が、ただひたすら愛おしくて、俺にとって薔薇園は、待ち望んでいた"甘い"時間を過ごす、特別な場所だった。