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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 




 そんなある日――。


 隣国から国王とふたりの王子の接待をするために、大公の嫡男としての挨拶を大公より命じられた日。

 姫との勉強はお休みとなり、ひとり寂しく城の廊下をとぼとぼと歩いていた時のことだった。

 磨かれた廊下の上に、丸まった紙屑が落ちていた。

 今まで城にゴミが落ちていたことなど一度もない。

 これは誰かのポケットから落ちた、もしやなにかメモでも書かれた秘密のものなのではないか…。そう思い俺は、禁忌の扉を開けるような興奮を抑えて、息を詰めながらゆっくりと、やけに柔らかい材質のそれを開いた。


 中にあったのは――。


――鼻水……?


 粘りある透明な液だけ。

 ……鼻をかんだ時のものらしい。しかも大量だ。


 過度に期待しすぎたためのこの大きな失望感と共に、手にねっとりとついてしまったそれを早く洗い落とさねばと思いつつ、また見つけてしまう新たな紙屑。


 前を見てみれば点々と落ちている。

 まるで小鳥を誘うパン屑のようだ。


 俺の仕事は城の清掃ではないが、それでも来賓客が来るという今日、こんなゴミを見られてしまっては、王室の威厳に関わる。


 しかも母とのあばら屋を綺麗に掃除することに喜びを見いだしていた…清掃好きな俺としては、この紙屑の存在が目障りで。

 俺は幾つも幾つも紙屑を広い、片手に抱えて歩くのだが、どうもこの紙屑はこの城をぐるぐる回っているようにして、キリが無く落ちている。

 気づけばぐるりと一周していて、このゴミを捨てた主は、一体どこに向かって歩いて居たのかさっぱりわからない。

 立ち止まり、手に抱えたゴミの山を目にして、思わず大きなため息をついていた時だった。


 ゴンと後ろから追突されたのは。

 声を上げてよろめいた俺が、なんとかゴミを散らさずにして振り返れば、


――あ、あった……。



 いがぐり頭の太った子供。

 金髪の巻き毛だけがまともに見える…そんな子供が、眉間に皺を寄せた顰(しか)めっ面で、俺の手の中のゴミを見つめていた。

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