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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
――あ、ありがとう…拾ってくれて…。
どもりながら、顰めっ面のまま、なぜか俺が礼を言われて。
そして直後に笑おうとしたのか、顔の筋肉を緩めた途端、鼻からつつつと鼻水。それを思いきり啜るようにして、再び顰めっ面。
……この顰めっ面は、鼻水が垂れるのを我慢しているのか。
ということは、俺が抱えているゴミを作った主と、俺の手にべっとりと鼻水をつけた主は、こいつなのか。
どこから紛れ込んだんだ、こいつは。
腹がはち切れんばかりで、服がぎっつぎつ。
ズボンなんてぱんぱんで、ちょっと動くと思いきりびりりといきそうだ。
――鼻、かんだら?
――ん。だから…それ頂戴。乾かして、伸ばして、また……。
――使うのか? これを!?
少年は顰めっ面のまま頷く。
――お兄…たんがくれたもの、僕、大切……。
――大切だったらなんで使うんだよ。二度は駄目だって汚い。
――汚くない…。お兄たんのは…綺麗…。
――綺麗なものでもお前が鼻をかんだら、それでもう駄目だろうって。
すると少年の目からぽろぽろと涙。
――お兄たんから貰った宝物…、僕が…汚くしたの?
さらに鼻水が出そうになったのを我慢しているらしく、口をひん曲げて凄まじい顔の歪み方をしている。そしてふるふると震えて、腹のでっぱりがだんだん引っ込んでいくのを見て、こいつが息を止めて鼻水が垂れないように辛抱しているのを知った。
――おい、顔色悪いぞ!? 呼吸をしろよ。鼻をかめって!!
――もう紙ない…。僕の…宝物の袋から、出て行っちゃって。
見せたのは汚いズタ袋。汚い刺繍で"ナツ"と書かれている。
そしてその袋は底が破れていたことから、どうやら鼻をかみながら歩いていた…ナツというこいつが、袋に入れたこの紙屑がなくなっているのに気づき、この紙屑を探しに歩いている途中も鼻をかみ。都度落とされて袋にたまらない紙屑を、俺が律儀に拾い集めていたらしい。