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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 

 それまで俺は、自分の意志でどうこう動いてきたことはなかった。

 姫を娶るということも、俺が娶りたいと動いたわけではなく、大公のお膳立てに乗っかっただけだ。結果、惚れた女が妻になっただけのこと。

 俺の意志など尊重されない世界に、俺がいることに疑問を持つことはなかった。

 だがハルさんは違った。

 俺とは正反対に、国王にも父たる隣国の王にも言いたい放題のハルさんは、俺がいる時は必ず俺に意見を求めた。ナツにも意見を求めた。

 かなり年下の俺達の意見もきちんと耳を傾けてくれる。勿論ナツのどもって消えて行きやすい言葉も、辛抱強く言い終わるのを待ってくれている。

 それ以外では辛抱ができないとしか思えないほど短気なのに、俺達だけは違っていて。


 その頭のよさ、その機知や奇抜姓。そして圧倒的な美貌――。

 ハルさんは瞬く間に俺の尊敬するひととなった。

 そして俺を見ると笑顔になるナツが可愛くて。とろいなりにも一生懸命で、感受性も豊かで。なにも面白いところなどない俺と、気の利いた会話ひとつできない俺と、一緒にいられるだけで身体全体で喜んでくれる優しいナツのその心に感動して。

 ナツは俺の唯一の親友になった。


 だが、ひとつ……心配事があった。

 この兄弟の興味は姫にも注がれていた。

 勉強せずに逃げる姫を追いかけるのは俺の日常茶飯事。この城で俺だけが姫を追いかけていることを許されていた…言わば俺の特権。

 その領域に、この兄弟も踏み込んできた。


――サクラ。お前、楽しいか、女を涙目で追いかける人生。

――男なら、もっとしゃんとしろ!! なめられるな。


 そう俺の背中を思いきりばちんと叩くと、


――こぉら待て、シズ――っ!!

――嫌ああああ、なんでハル兄が追いかけてくるの――っ!!

――ナツ、先回りしろ――っ!!

――させないもん!!

――ふぅふぅ、ん、あ……しーちゃん逃げちゃった…。


 姫がいかに本気で泣いてわめいて逃げ出そうが構わず、追いかけ回した。
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