この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君の弱点と私の本性
第6章 そうやって、私を

予想はしてたけど、本当に誰もいない。
なのに、鍵開けっ放しって不用心過ぎでしょ…
「ふぁ…」
手もあてずに馬鹿でかい欠伸をする、くそぅ暇だ。
って言っても、私の心はぐっちゃぐちゃ。
なんで京は素顔を見せたの?
私は、望んでないのに…、前に私が髪切って素顔を見せたら京も素顔見せてくれる?ってきいた時はやだって言ってたのに!
もしかして自分がかっこいいってこと自覚してない?
でもだからって、だって、嫌だよ…
「はあ…」
付き合ってからどんどん好きになって、独り占めしたくなって、私…こんなワガママになってる。
ダメだなぁ、京は私みたいなの苦手そうだよ、だってこんな女々しい所見せたことないもんなぁ。
不意にぼんやりと出てくる人の顔。
「ろ、くひら…かなめ…」
声に出すとその存在が鮮明に脳裏に浮かぶ。
見た目は軽そうなのに言葉遣いは丁寧だったな、それにがっついてくるのかと思ったら一線はわきまえてたし!
あと…なんだろう?京と似てる何かがある気がしたんだ。
オドオドヘラヘラはしてないけどね。
「椿」
後ろから聞こえた、何度も聞いた低めの掠れてるような愛しい人の声。
誰かなんてわかってるけど、返事をする気にはならない。
「ごめんね、椿。突然、こんなことして」
中身は肉食なのにキャベツの皮を被ったような京。
「学期末で1位とって、今回のテストも1位狙ったんだけど…俺13位でさ、ある人と賭け事してて俺負けたんだ」
なによそれ、私の不安よりも賭け事優先?
口には出さない黒い感情、地味な優等生の私の本性。
「それに、地味カップルって前に噂されてたから、ちょうど良い機会だと思ったんだ
椿、俺と本当に別れたいの?」
気づけば隣の椅子に座って机の上にある私の右手をそっと包み込んだ、その暖かさに口を開いた。
「別れたくない、でも、よく考えたら私は弱点が知りたくて京と付き合って、それから本当に京が好きになって
今となってはかっこよくなった京に不安ばっか募らせて
私が彼女失格なの…!」
溜め込んだ気持ちに音がついた、声になった。
涙が、頬を通り顎から一粒落ちた。
京は私を抱きしめた。
「椿…愛してるよ」

