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白い飛沫(しぶき)
第15章 最終章
順也は、思いがけない磯崎の訪問に戸惑った。

『なに?原稿依頼なのか?』


「うふふ、何しに来たんだって顔してるわね」

「えっ?いや、今日は会う約束してたっけ?」

さきほど、取材旅行から帰ってきたばかりだから、体はクタクタだった。

抱いてほしいとせがまれても、
たぶん今日は勃起しないだろう。


「会う約束をしていないと訪ねてきちゃダメ?」

いや、そんなことはないけど・・・

言葉を濁していると、
彼女はバッグをゴソゴソし始めた。


『バイブとかで遊んで欲しいのか?
今日は勘弁してくれよ』

嫌そうな顔がでてしまったのか、
僕の顔を見て、
「うんざりって顔ね。ふん、いいのかなあ。
そんな顔をして。
せっかく大事な届けものを持ってきてあげたのに」

届けもの?

「ジャジャーン!これなにかわかる?」

手には書簡が握られていた。


「手紙…かな?ファンレターですか?」

「ピンポーン!
でも、ただのファンレターじゃあないわよ。
たぶんね・・・」

そう言って手紙を僕に手渡してくれた。


差出人の名前を読んで、僕は仰天した。


『川原理恵』

えっ?うそ?ほんと?

急いで、中の便箋を取り出し、読んでみた。


「なんて書いてあるの?」

磯崎が興味深そうに尋ねる。

『拝啓 江本順也様
あなたの書かれた「白い飛沫(しぶき)」を読ませていただきました。

あなたは○○中学で私と同級生だった順也くんですよね?

あなたの書かれた官能的な文章に赤面しながらも、
あの短かった中学校の思い出を懐かしく感じました。 

あれから30年、
順也くんにも家族ができて幸せな家庭を築かれていることでしょうから
ご迷惑かと思いますが・・・

順也・・・できることならもう一度会いたい・・・

この手紙があなたの元へ届くことを信じて、

そしてあなたが同級生だった江本順也くんだと願い連絡先を書かせていただきます。

090-△△△△-○○○○』



「会いたいって・・・
会いたいって書いてあるよ!!」

「よかったですね先生。・・・・
これで私と先生のラブラブな関係も終わりですね」

磯崎の頬に一筋の涙が流れた。
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