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花に酔う
第4章 椿 *
「……ほんと、ばか」
そして彼女はぽつりと零す。
「私なんかのために……そこまでしようとするなんて……」
……そんなこと、自分でいやってほど分かってる。
振り向いてくれないひとのために。
自分の一生を投げ出そうとしている僕は、まわりからは本当に馬鹿としか思えないだろう。
「……選べなくてごめんね」
――――ほんとだよ、と。
思わず僕は苦笑した。
「彼と出逢ってなかったら……何か変わってたかな……」
答えられない呟きに
「……たらればなんて、今さらでしょ」
そんな言葉を返して君を見た。
僕の視線を受け止めた君も、そうだね……と、小さく笑う。
そして。
腕を掴んでいた僕の手を、自由な方の手で外す。
それから、両手を首の後ろへ回して何かをしたかと思ったら、そのまま背中に落とした指先。
「……何……?」
僕の呟きには答えず。
彼女は喪服のようにも見えるその黒いワンピースを、すとんと身体から落とした。
「……どういうつもり……」
白肌を飾る、黒いレースのスリップ。
彼女は黙って、そのまま僕の身体に自分の身体を寄せてきて――――。