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花に酔う
第4章 椿 *
……不意に背中に感じた温もり。
前に回された彼女の両手が、僕を抱き締める。
「……ありがと」
呟きを耳にし、ゆっくりと振り返った僕。
彼女の揺れる瞳にまるで吸い込まれるかのような感覚を覚える。
一度僕から離した両手でスリップの肩紐を下ろす彼女。
下着だけになったその身体。
そして僕の首に腕を回し直し、そのまま引き寄せるようにして畳に横たわる。
彼女から目を離せない僕は彼女の身体に覆い被さるような形で。
その髪を何度も撫で。
その瞼に……頬に触れ。
唇を何度も指先でなぞる。
この手に君のすべてを記憶する。
この指先に君のかたちを覚え込ませる。
もうこの先彼女に触れられないのなら、せめて。
……せめて、そうしたかった。
「全部、見たい」
彼女の身体をこの目に焼き付けたい――――そうも思った僕は、それを願った。
彼女は、頷いて。
その白い肌を躊躇うことなく僕にすべて晒す。
幼い頃のようなあどけなさに、大人の色をもあわせ持つ……こんなにも魅力的な、僕の最愛のひと――――。