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花に酔う
第4章  椿 * 


彼女の裸を見るのはこれが初めてではなかった。

一緒に住んでいるあいだ、入浴中に気分を悪くした彼女を介抱したこともあったから。

ただ、彼女を支えることで精一杯だったそのときは、その行為で性的興奮を覚えたことなどなくて。

添い寝をするようになってからも。
その身体がどこかへいってしまわないようにと……そればかりを考えていたから。


……だから。

そういう意味で、彼女の裸を見るのはこれが初めてで。



「きれい……だね」



呟きながら、見つめた。

首から鎖骨にかけてのラインも。
胸の膨らみも。
細いウエストが描く曲線も。

何もかもかきれいだった。


「……痩せたからちっちゃくなっちゃった」


そう言いながら彼女は自分の胸を触る。
死のうと考えているひとが、そういうの気にするんだ……と思ったら、少しおかしくて。


「……なに?」


僕の様子に、訝しげに聞いてくる。
黙って首を振り、胸を隠そうとでもしているかのようなその手をよけさせた。


「ちゃんと見せて」


僕の言葉に、素直に、そうした彼女。



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