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花に酔う
第4章  椿 * 


心がもうここにないのならそれでもいい。
ただ……僕のそばで生きていてほしい――――そう願うのは僕の我が儘なんだろうか。

彼女の願いは彼の元へいくこと。
分かってる。
彼のいない現実に生きていくことが耐えられないという彼女の想いを。僕まで苦しくなるほどのその絶望を……想像し得る範囲で理解しているつもりだった。

そんな彼女にとってもう、僕の願いは受け入れ難いものでしかないだろう。


それでも――――。


……僕のそばにいて、と。
口づけの合間に呟く。

答えを聞かずに、またしっとりと押し当てた唇。

離した刹那……いかないで、と。
そう乞い願う。


だって頬に当てられた手はこんなにもあたたかいんだ。


この熱を――――失いたくない。


「……僕を見て」


彼女の身体に在るままの僕。
萎えることのなかったそれを、再び動かし始めた。

僕の欲と、彼女の蜜。
掻き回されて交じり合い、水音を奏でる。

静かな部屋。
僕と彼女の吐息と……その音。
合わさり、淫靡な色を纏う。
そこはまるで夢か現か分からなくなるような雰囲気に彩られた空間。



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