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花に酔う
第4章 椿 *
ふたりしか世界には存在していないかのような感覚に陥る中――――僕に求められるままに身体を開いて揺らす、彼女を見つめる。
小さく喘ぎつつ、どこか遠くを見るようなその瞳。
僕を見て、と再び口にした。
ふっ、と。
その言葉にしっかりと僕を見ながらも。
すぐにまた、すっ――――と。
僕を通して僕じゃない誰かに意識を向けるような……そんな曖昧な視線になる。
白日夢と現実の狭間にたゆたう彼女。
抱かれているのは僕にか――――それとも、彼になのか。
……少しだけ思ったそんなことは。
切なげに一際高くあげた彼女の声に煽られるように唇を重ねたことで。
深く舌を絡ませ合うことで……すぐに、忘れた。
それを知っていったい何になるだろう――――そんなふうに無意味に思えたから。
それよりも彼女の身体に無心になって溺れたかったから。
彼女のすべてを目に……身体に……心に焼き付けたかったから。
その華奢な身体が壊れるぐらいに突き上げる僕自身に絡みつく、彼女のなか。
うねって。
引き込んで。
離すまいと。
何度放っても、逃さないと言わんばかりにそこはそうやって僕を刺激し続ける。
身体も、意識も。
もうどろどろになっていく。
朦朧としながらも、抱き続けた。
離せなかった。
離したくなかった。
……終われば、それが待っていること。
頭のどこかで分かっていた。
だから。
……だから――――……。