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花に酔う
第4章 椿 *
そこは、ずいぶんと細く感じた。
少し力を入れただけでも壊れてしまいそうな気がした。
僕を見つめていた彼女の瞳が閉じられ。
それを目にした僕の中に湧き上がったその感情――――。
「僕を見て」
ちゃんと。
最後のときは、僕を見て、そうして。
目を閉じて誰を想うつもりなのか……分かった僕はそれを許したくなかった。
僕を。
僕だけを見て。
ちゃんとその目で誰が自分をこうしているのか見て――――。
夢の中にまだいるような意識の中。
それだけははっきりと思った。
ゆっくりと目を開ける彼女。
それに合わせるようにゆっくりと僕も手に力を込めていく。
いろいろな想いがゆらゆらと絡みあっていた。
彼女を苦しみから開放してあげたい。
それにはこの手段しかないと言うなら。その決意が揺るがないのなら。ひとりで寂しく逝かせるなんてことはしない。
最後まで僕が見届けるしかない。
もう僕にできることはそれしかない。