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花に酔う
第4章 椿 *
……そして。
僕を頑なに拒む彼女に対する……ある意味憎しみにも似た感情。
だって。
そばにいてくれるだけでいい……そんな願いさえ受け入れてはくれない。
僕はずっと君だけを愛してきたのに。
どうして君は僕を愛してくれないの。
彼はもういないのに。
でも僕はここにいるのに。
どうして僕を選んでくれないの。
どうして。
……どうして。
「……っ……!」
彼女の顔が、ぼやける。
ちゃんと見たいのに。
そのすべてを見届けたいのに。
……そのとき。
震える何かが、僕の目元を辿った。
それは彼女の指先だと、すぐに気付く。
戻った視界の中、その唇が小さく動いたのが分かった。
震わせながらも、懸命に言葉を形作る。
その意味に、こみ上げてきた感情。
雫になり彼女の頬にぽとぽとと落ちた。
……数十秒後。
僕の頬を指先で撫でるようにして。
静かに畳の上に落ちた、彼女の手――――。