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花に酔う
第4章 椿 *
その手紙を手にしたまま、障子を開けた。
差し込んでくる光。
何だかすごく眩しくて。
目を細めるようにしながら降りた庭。
中心まで歩き。
ポケットの中を探り、取り出したライター。
躊躇うことなく、彼女の手紙に火を点けた。
……あっという間にそれは燃え。
彼女の遺した言葉は真っ青な空に消えていく。
静かにそれを見つめていると、不意に後ろから名前を呼ばれた気がして。
え……? と思わず振り向いた。
僕の視界には誰の姿もない。
けれど――――。
彼女がさっき綺麗にしてくれたはずの木の下に……一輪の、椿の花。
……新たに落ちたのか――――。
近寄り、拾い上げた。
少しも痛んでいない、とても綺麗なその白。
手にしたまま部屋に戻り、横たわったままの彼女の傍らに膝をつく。
一度畳の上に花を置いて。
そのまま両手で抱き起こしたその身体。
頬にかかった一房の髪を、手でそっと払う。